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不良債権のための提言(1)
平成15年1月10日付

総理大臣 
経済財政政策担当大臣
産業再生機構担当大臣 

小泉純一郎
竹中平蔵
谷垣禎一氏
への提言

不良債権処理に関する提言
冠省
 不良債権処理をめぐり、改革に取り組まれていることに対し、敬意を表しつつ、当職の緊急提言を申し上げる。
 不良債権処理を急ぐことは、極めて重要であり、また、金融機関に公的資金を注入することも歴史的意義を有するものである。しかしながら、その手法において、物と金の流れを円滑にすることが必要であり、不良債権の処理の結果、経済が更に不況化又はデフレ化してはならない。
 不良債権の処理により経済の活性化と、債務者の再生を目的とすることの2大目的を達成することが必要である。すなわち、不良債権処理は、あらゆる不良債権の担保物件が全国において強制競売に付されることではない。あらゆる不良債権の担保物件についての競売が発生したときには、その時間のロスと共に競落物件の価格の下落を引き起こし、さらなるデフレが進行する。これを阻止するためには、強制競売によらない物件の活用、任意の売却を進めなければならない。任意の売却こそ迅速に不良債権を処理し得る。競売は、処理の長期化と価格下落を引き起こす。この方法は、債務者の一定程度の救済をするという目的も達成できる。特に、中小企業、個人(事業者)の救済のためには重要である。デフレ経済により担保物件の価格が下落し、その不利益を受けた債務者は、本人の責任ではなく、経済の変動による犠牲者といえる。事情変更の原則(ドイツ法)やフラストレーションの法理(英米法)により、債権元本の一部カットも含め、債務者は一定程度救済されるべきものである。
(注)五十嵐 清「契約と事情変更」有斐閣(1969年)
久保宏之「経済変動と契約理論」成文堂(1992年)

 

民事再生法申立に対して賛成されたい。
 不良債権処理の対象となる債務者の中には様々な者がいるが、民事再生法の申立に至った者は、弁護士、公認会計士の指導の下に透明な手続を行い、再生を目指している。このような債務者の申立については、金融機関は原則賛成すべきである。別除権協定も積極的に締結することを進めなければならない。
  民事再生を申し立てる債務者とは、いわば不況化における優等生であり、原則支持すべきである。極く例外的に否定することはあっても、申立代理人弁護士、公認会計士の指導、裁判所と監督委員の監督に従う申立債務者の再生計画には、原則として賛成すべきである。事情変更の原則により、元本一部カットをすることが必要である。これが債務者の再生と不良債権処理の効率化に必要な第1の方法である。
2 長期分割弁済協定の推進(貸手責任の明確化)
 上記民事再生法申立の事案においては当然であるが、申立に至らない事案でも、10年乃至15年間の分割弁済の協定をすべきである。その際、RCCが悪徳金融機関の貸手責任を承継している場合には、元本の一部カットをすべきである。詐欺的貸出方法により多数の債務者が被害を受けており、これらの債権はほとんどRCCに承継されている。RCCは、調査の上、詐欺的貸手責任を明確にして、自主的に元本一部カットをすべきである。
3 担保物件の売却方法の円滑化
 債務者の担保物件を売却させる際には、迅速かつ円滑な手段をとるべきである。すなわち、債務者が身ぐるみ剥がれて一銭も持たずに土地を手放すということはあり得ない。債務者側弁護士といえども、依頼者たる債務者を追い出すための説得はなし得ない。債務者に対し、最低300万円、乃至は売却価格の7%程度を支払うべきである。これにより、債務者に再生資金(引越費用、移転先の敷金、仲介手数料、生活費等)を保証し、物件売却への協力をさせ、かつ再生への消費を活性化させることができる。債務者にすべての責任があるわけではないことを銘記すべきである。
  任意売却による価格については、RCCは高額であることを望む必要はない。債務者への配分金も含めて、最低競売価格の推定値を若干超える値段で処理できれば充分である。
4 物件売却先の自由化
 RCCは、債務者の親族、関連企業等に対する物件の売却を一切認めないできた。時に、高圧的にRCCの社員がこれを阻止してきた。然るに、債務者の親族の中には債務者をサポートする人間がおり、親族のグループが買い取るということも許容されるべきである。
5 RCCの役割
 RCCは、出発時に、国民に二次負担を掛けないということをスローガンとした。然るに、これは極めて視野の狭い発想でしかない。公的機関であるRCCは、国民の税金を使うこともあり得るわけであり、不良債権の処理の過程で国民経済の活性化が図られ、トータルとして国民が利益を享受し、そして納得するものであれば良いわけである。
  現在、RCCは、債権と物件を金融機関から安値で買っているが、仮にこれを高値で売却して利益をあげようとするならば、一方で債務者を裸で追い出し、又は強引に競売を誘発するだけである。このことは、債務者に対しまったく救済の手を差し伸べず、かつ、経済の閉塞化を進めるだけである。RCCは、多数の消費者側弁護士を採用したにもかかわらず、彼らの経歴をまったく活かすことなく、債務者の救済にほとんどあたっていない。
  これに対して、RCCは、悪徳金融機関の極く僅かの人間を追求することをしているが、これは単に生贄として血祭りにし、国民やマスコミの鬱憤をはらす、所謂スケープゴートの手法によるだけである。かつての政治家や警察が行った、このような生贄を作り出すような手法は、悪しき権力者のやり方である。より重要な不良債権処理、債務者救済に力を注ぐべきである。
  RCC及びその消費者側弁護士が行うべき道は、債務者のささやかなる救済にも早急に手を付けることにより、国民経済の活性化を計るべきである。
6 情報開示の必要性
以上によれば、RCCは、購入価格と売却価格をすべて情報公開すべきである。不当な利益をあげることは許されない。また、悪徳金融機関を承継した場合には、悪徳金融機関が行ってきたこと全てを情報公開すべきである。悪徳金融機関の訴訟を引き継いだRCCは、債務者の要求する文書を訴訟においてすべて提出すべきである。
  従前、債務者側が文書提出命令を出したにもかかわらず、裁判所は極めて抑圧的方法で却下をすることが多いが、RCCは率先して提出すべきである。RCCがこのような公明正大な手続を行うならば、国民の信頼を得ることができる。
  しかし、RCCが債務者への過酷な対応を続け、承継した悪徳金融機関の責任も認めず情報公開もしないならば、住専や悪徳金融機関の元社員を使用してきたことが批判されるし、彼らに盲従していると見られてもやむを得ない。彼らをすべて解雇しないで国民の納得が得られると考えているのか。早急に改革を進めるべきである。
草々