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不良債権のための提言(2)
平成15年10月16日付

内閣総理大臣 小泉純一郎 殿 
東京都新宿区新宿1丁目17番2号第三遠藤ビル3階
  遠藤・萬場総合法律事務所(http://member.nifty.ne.jp/endo-law/)
電話 03-3350-5885 
FAX 03-3350-5070 

法学博士・桐蔭横浜大学教授
弁護士 遠  藤  直  哉

「不良債権処理に大幅な無税償却を認めよ」
 竹中金融相は、15の銀行に対して業務改善命令を出した。しかし、これを可能にするには銀行が収益を確保できる条件を整備し、中小企業への貸出のリスクも減らす政策をとるべきである。すなわち、本来の貸付機能の回復なくして、銀行の再生はありえない。そのためには、米国を参考に、不良債権処理を進める際に、無税償却を大胆に認めることである。銀行が債務者に対し不良債権を放棄する場合に、放棄する債権を寄付金とみなさず、それを損失(経費)として無税償却を大幅に認めれば、銀行の不良債権処理は進むし、貸出リスクも減る。しかし、政府の方針には一貫してこの視点が欠けてきた。
 すなわち、日本では、財政優先主義のもとに税金を取り立てることのみを先行させ、銀行の貸金や企業の売掛金が不良債権化しても、無税償却は厳しく制限されてきた。無税償却をするためには、債務者の資産をすべて売却させ、無収入にさせるなど、事実上の破産状態にしなければならなかった。保証人個人の自宅等の不動産の売却もさせられた。債権者は厳しく中小企業や保証人を追い込むため、債務者の再生は困難となり、大量の不動産の売却や競売がすすみ、デフレは深刻化した。さらに問題なことは、不良債権処理の迅速化が要求されたため、銀行はより確実に損失処理できる道を選び、貸付債権を債権買取機構・RCC又は外資などに売却することにより損失を出し、無税償却をしてきた。しかし、この方法では、金融機関は安値で債権を売却せざるを得ず、大幅な損失に苦しむこととなった。また、債権譲受会社、あるいはこれらから取立の委託を受けたサービサーは、買取った債権に利益をのせて強引な取立を行ったり、夥しい競売を行った。債務者側が必要最小限の不動産を残すために分割弁済を交渉しても、長期分割には応じない。これらは金融機関でもなく、いわば取立屋であり、金融機能を有していないからである。
 しかし、さらに深刻なことは、民間の金融機能の収縮の影響で、公的機関まで回収の不安に怯えて貸しはがしに走っていることである。筆者が担当した民事再生申立事件の認可終了後、東京都信用保証協会に対し、その債務全額について10年間の分割弁済を提示したが拒否され、3年間で支払わなければ競売にすると迫られた。政府の中小企業対策は、ほとんど絵空事に過ぎない。
 政府の役割は、経済の再建あるいは債務者の再生の為に必要な金融機能の回復である。そのための最優先課題は、不良債権の一部を無税償却したうえで、残額(事業や生活に必要な最小限の不動産によって担保される額)につき長期分割弁済を認めるスキームを作ることである。必要があれば、直ちに税制を改正すべきである。銀行は債権を安値で売却する必要もなくなり、債務者も長期分割弁済が可能となる。
 結局、今日の不況の大きな原因は、財政優先主義の下に無税償却の弾力化を認めないまま、強引に不良債権処理を進めた政策の失敗にある。産業再生機構など一部で無税償却を認め出したが、広く平等に適用しなければならない。同様に、過酷な税として、債権の放棄に伴う債務者への債務免除益課税があり、税負担のため銀行への弁済が圧迫され、かつ債務者の再生に支障をきたすことが多い。国は火事場泥棒のような税制を併せて直ちに廃止すべきである。

以上