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「経済再生のための不良債権処理に取り組め」 

(桐蔭横浜大学教授)弁護士 遠 藤 直 哉
 不良債権処理に一〇年以上かかっている。中小企業に対する膨大な不良債権処理があることを考えれば、景気回復はおぼつかない。不良債権を迅速に処理することにより経済の回復と、財政建て直しに取り組むべきである。「不良債権」とは、取り立てが出来ない債権のことである。「処理をする」とは、法律上、債権を放棄するまたは債務を免除することであり、会計上または税務上では、帳簿から落とす、償却をするということである。不良債権処理は極めて容易なはずであった。銀行が債務者に対し、不良債権を放棄する場合には、これを損失(経費)として無税償却を認めるならば、銀行の不良債権処理は進むはずであった。しかし、日本では、財政健全主義の下に、税金を取り立てることのみ先行させ、銀行の貸金や企業の売掛金が不良債権化しても、無税償却は厳しく制限されてきた。無税償却をするためには、債務者の資産を全て売却させ、無収入にさせるなど、事実上破産状態にしなければならなかった。保証人個人の自宅などの不動産の売却もさせられた。債権者は厳しく中小企業や保証人を追い込むため、債務者の再生は困難となり、大量の不動産の売却や競売が進行して、デフレが深刻化した、それ故、このような事態を止め、債権放棄を迅速かつ大幅に進めるためには無税償却を柔軟に認めることである。銀行協会も来年の税制改革の提言としている。

 不良債権の一部無税償却をするということは、放棄後の残額(事業や生活に必要な最小限の不動産によって担保される額)につき、長期分割弁済を認めるスキームを作ることとなる。自宅や工場などの必要最小限度の土地を残したままでも放棄させ、この分の無税償却を認めるべきである。このような措置により、銀行の側でも債務者の側でも、不良債権処理をし易くなる。

 また、債務者に対する債務免除益課税がされてきたが、税負担のため、銀行への弁済が圧迫され、かつ、債務者の再生に支障をきたすことが多い。国はこのような税制を直ちに廃止するべきである。

 次に、RCCや保証協会は、公的機関として、無税償却の恩典を受ける訳ではない。それ故、民間金融機関よりも、債務者の再生のために、長期分割弁済を認めるべきである。また、損害金の免除、利息のカットなども大幅に進めるべきである。しかるに、民間金融機関以上に公的機関は、厳しい取り立てを行っている。

 米国では、自宅に対する住宅ローン以外の担保権設定を禁じている州がある。すなわち、自宅を事業や他人の保証に提供することは出来ないこととなる。通商産業省は、中小企業への貸付に際し、個人保証を取ることを制限する方向で検討し始めた。少なくとも米国のように自宅を事業の保証として提出することは禁止すべきである。

 また、銀行は不良債権を外資などに売却することにより損失を出し、無税処理をしてきた。しかし金融機関は、安値で債権を売却せざるを得ず、大幅な損失に苦しむこととなった。債権譲受会社あるいはこれらから取り立ての委任、委託を受けたサービサーは、買い取った債権に利益を乗せて強引な取り立てを行ったり、おびただしい競売を行った。一億円の債権を500万円で買い取り、債務者に一億円を請求する例すらある。無税償却をすることと法律上の放棄は一体のものである。このような債権譲渡を禁止する、または、購入価格の1.5倍までしか請求できないなどと制限すべきである。不良債権処理のために、なすべき事は多く、迅速果敢な立法をするべきである。