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遠藤直哉プロフィールフェアネス法律事務所について最近の訴訟活動・報告著書紹介


-日本アスベスト事件-
第2版・労災職業病健康管理T
      総合労働研究所
〔編集〕三浦豊彦・安西 愈・斎藤 驍
-日本アスベスト事件-
弁護士 遠 藤 直 哉
建築現場にてアスベスト(石綿)の粉塵作業に従事した労働者がじん肺(石綿肺)に罹患した場合には、因果関係及び使用者の過失は肯定される。
(東京地裁昭55年・3・6和解)

ワークショップD:アスペスト訴訟
2004年世界アスベスト東京会議
ジョンズ・マンビル社に対する補償請求
遠藤直哉
弁護士、桐蔭横浜大学法学部[日本]
抄録:
報告者は、1983年に米国におけるジョンズ・マンビル社を中心とする大量のアスベスト訴訟の実態を調査し、1984年日本で社会科学系では初めて、米国においてアスベスト訴訟が歴史上最大のPL訴訟となっている実態を報告し、これを元に日本においても将来大きな被害が発生するとの警告を発表した(ワシントン州立大学ロースクール修士論文「米国のアスベスト集団訴訟と日本における予測」・労災職業病管理「アスベスト」215頁総合労働研究所発行・初版1984年・改訂版1992年)。
1982年、米国ではジョンズ・マンビル社は、1990年、米国倒産法第11章の申請をした。米国の被害者弁護団が来日し、ジョンズ・マンビル社に対する補償請求を行うよう依頼された。そこで、1990年以降、報告者と弁護士森田明らは日本全国の被害者約50名の代理人となり、米国弁護士事務所を通じ、申請を行った。残念ながら下記のとおり申請が認められたに止まった。
合計15名総額35,561ドル


Iジョンズ・マンビルの破産申し立て
1・.ジョンズ・マンビル社は世界最大のアスベストメーカーであった。1960年代から被害者から大量の訴訟が提起され、1980年に入り、約20億ドルの賠償額が予想され、ついに、198ネ年ジョンズ・マンビル社はアメリカ連邦倒産法に従い、第11章の申し立てを行った。会社更生への道を目的としていた。将来の賠償請求に備えるためであった。このような大量の不法行為についての申請は、他にロビンス社、ダウ・コーニング社の例がある。
2.アスベスト被害者委員会は、現在の被害者のみを救済の対象としたので、裁判所は、将来の被害者の更正管財人を選任した。この二者を含む利害関係人すべての4年問の協議に基づき、将来の被害者救済を含む会社更生案(マンビルプラン)が作られ、アスベスト被害財団(トラスト、が設立された。このトラストは、被害者との和解による解決をすることとし、制裁慰謝料を認めないものであった。また、全てトラストを相手とするものとの措置がとられた。
3・1986年に・マンビルプランは、投票にかけられることとなった。当時、16,000件のうち、約6,400件が、更正手続への申立をしていた。しかし、数万件の申立がされると予想された。それ故、これを含めると、手続は遅延すると考えられた。裁判所は、広くメディアを使用する公告を採用し、潜在的被害者の参加もさせて、投票させることとなった。その結果、52,440人が申し出て、50,275人(95.8%)がマンビルプランを認めた。1986年12月に、マンビルプランは認可された。
4・被害者からの申立は、1994年末までに既に24万件となり。トラストは破綻状態となった。トラスト配当手続(TDP)は、賠償額を症状毎の7つにランク分けし、かつ、2000年には10%から5%の配当率に下げた。2003年までに、597,000人に総額32億ドル(3200億円)が支払われた。未だ65,000人が手続中である。しかし、2003年だけで、101,200人の申し出でを受けているので、未だ潜在的被害者は多いといえる。

V日本からの請求
1.ガルート弁護士の来日
ジョンズ・マンビル社に対する補償請求を米国で担当していたガルート弁護士とカンター弁,士が来日し、弁護士遠藤、弁護士森田明らに対し、日本からの請求を行うよう依頼した。遠藤直哉弁護士の事務所に所属していたアルバート・ガスタフソン弁護士の協力のもとに全国のアスペスト彼害者約50名から申請を行った。その際、レントゲンの記録、診察記録等を添付した。被害者の症状は、石綿肺(アスベスト肺)、中皮腫、肺ガンなどであった。
2ジョンズ・マンビル社製のアスベストの特定
トラストは、請求人がジョンズ・マンビル社のアスベストそのものに被爆しているということの立証を求めてきた。すなわちアスベストの被害・症状と、ジョンズ・マンビル社製アスベストとの因果関係があるかということである、日本ではアスベストの使用量は増大し続け、輸入量が増大し続けていることは確認できた。しかるにジョンズ・マンビル社製晶が日本の建築現場、造船工場で使われているのか、他社の製品と識別できるかということは困難を極めた。請求人は個々の作業場で働いていていたため、これを調査することは不可能に近かった。そこ
で、ジョンズ・マンビル社の輸入量が、日本の輸入量全体の何割を占めるかを調査し、市場占有率でこれの責任を負わせることを考慮した。しかし、その輸入における割合自体を確定することも不可能であった。
3補償額
トラストは、症状の軽重に応じて配当額のランクを分類してきた。それ故、そのランクに応じてその金額が定まった。
4配当率
しかし、破産手続における補償額は被害金額の低率の配当率であった、それ故、いずれにしろ全体的に極めて低額なものが提示されてきた、
5追加証拠の要請
日本側から提示された資料として、レントゲンの検査結果などを始め証拠を提出したが、これが不十分なものとされ、追加を要請された。しかし、請求からさらに数年が経てしまっており、もはやこれを収集することは不可能であった。
6申し立て請求の実費補償請求するについて、翻訳料が約100万円、その他実費が10数万円かかった。弁護士費用や医師の費用は、ほとんどポランティアであった。
トラストからの配当額のうち25%が、米国弁護士と日本弁護士とで折半され、日本では実費に充当された。
7補償手続きの結果
補償手付きの結果は下記の通りである。

以上


(参考) "Mass Torts Bankruptcies:The Who The Why and The How" by Georgene Vairo, American Bankruptcy Law Jpurnal, 2004, 78 Am.Bankr.L.J.93