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「ジェンダーバラエティーの課題」 
    
弁護士 遠 藤 直 哉

1.着床前診断とパーコール法について
 飯塚理八先生が男女生み分けを可能とするパーコール法を開発され、有用性を強調されて来られました。日産婦会が平成6年会告でパーコール法を全面禁止としたため、先生はこれを認められるよう日産婦会に再三に渡り申し入れして参りました。しかし、現在に至るまで、パーコール法全面禁止の会告は、何ら修正されておりません。他方、全国のSS研究会を中心とする産婦人科医はパーコール法による男女生み分けを現在まで実施しております。この事実は新聞や書物にも記載されてきました(毎日新聞社会部医療取材班『いのちがあやつられるとき』情報センター出版、1993年)。また、杉山レディースクリニックのホームページには、パーコール法の男女生み分けの施術を行っているとの案内があります。日産婦会では、この会告違反については除名扱いにはしておりません。当職も全国のSS研究会の医師の努力については評価しており、除名すべきでないことは当然と考えます。つまり、男女生み分けの会告違反をしても除名にしないのが実態であり、大谷医師のみを除名にすることは憲法14条(平等原則)違反ということです。そして、さらに問題なのは、パーコール法の成功率が不確定であることです。杉山レディースクリニックのホームページでは、成功率85〜90%とされています。大谷医師の反論書では、成功率80%以上と記載されています。最近、男子3人を持つ夫婦が女子を望み、パーコール法の施術を受けた患者が当職に相談に参りました。医師からパーコール法の成功率が8割であるといわれ施術したところ、4人目も男子となり、中絶するべきかどうか悩みつつ、5人目には絶対確実な着床前診断を出来ないかとの相談です。当職まで患者が相談に来るということは、法的手段をとってでも、実施できないかという質問をお持ちなわけです。法的手段もご説明しましたが、そもそも一般的にはいずれの手段が最適なのかとの問題があります。パーコール法に最も精通されている飯塚先生のご見解によりますと、パーコール法の成功率はより高く確実にできるとのことです。当職は、医師の間で情報の偏在があり、患者が適切な選択をし得ないことは問題であり、このことは、会告で全面禁止されているため、公には検証されることはない状態が続いているからであると考えます。このような技術の研修を阻み、患者が充分な説明を受けられないことは、日産婦会の責任ということになります。着床前診断の議論と共にパーコール法の解禁が必要です。伴性劣性遺伝の男女生み分けを含め、パーコール法により確実に実施出来ればこれによる方が身体への侵襲が少ないことになります。パーコール法による男女生み分けによっても解決出来ない症例について、着床前診断を行えばよいという考え方もありえます。最終的には患者の選択によります。しかし、日産婦会は国民に対し、先端医療の内容の是非を分かりやすく説明し、医師・患者との自由な意見交流を通じて、医療に尽くすことが責務であると考えられます。飯塚先生が、豊富な経験と世界的に誇る技術をもって、長い間パーコール法の解禁を主張されてきたにもかかわらず、これを検討しないということは、社会の常識では考えられないことであります。

2.除名撤回の要請
 大谷医師の反論書の中で、日本産科婦人科学会の副会長選挙(次次時期の会長選挙)が、公正に行われるようとりあえず抗議をせず、謝罪をしたしたのと記載があります。ご本人はこの程度の記載にとどめておりますが、もし大谷医師が除名となり、当職が代理人として日産婦会に対し除名無効の訴訟を提起した場合には、謝罪したことは罪を認めたと同じであるとの不利益を受ける恐れがあり、これに反論するため、選挙のために大谷医師へ激しい圧力をかけた手紙等を証拠として訴訟に提出せざるを得なくなります。当職としましては、日本産科婦人科学会の健全なる発展を望んでいる故に、再考をお願いしているわけであり、冷静沈着に除名の方針を撤回されるか、延長されることをお願いするものであります。
(尚、過去においては、会告違反につき今後しませんとの恭順の意を表した場合には、除名にしない慣行があったが、今回はこの慣行をも破るものとなっている)
3.審議会に対する日産婦会の責務
 厚生科学審議会や総合技術科学会議などの議会のあり方については、極めて問題があります。意見をまとめるについて、第1に、専門家の調査、討議をまとめることが重要であります。その専門家のデータ収集、分析、検討が十分であれば、第2に、国民各層から参加した審議会においても、これが尊重されることになります。それ故、日産婦会の専門家によるデータの収集、意見は極めて重要です。しかるに、生殖補助医療に関する専門委員会の意見が、親部会で大きく後退したということは、日産婦会の十分な支えのないまま、専門家委員会自体の検討が不十分であったこと、さらには、親部会においても、日産婦会などの専門家が十分なリードをなしえなかったからです。日産婦会は本来、産婦人科医師、患者を支える組織でなければならないわけですが、国民各層からの意見を専門家の立場でリードするどころか、会告を前提として、全く積極的な意見を出せない状況となっております。このことは、今後ヒト胚の取扱いその他の意見集約において、有効な意見形成が出来ないこととなります。日産婦会における自由な討議と柔軟な運営をお願いする次第であります。
大谷産婦人科ホームページ  http://www.otani.com/