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「傾斜地における宅地造成の安全推進に関する訴訟判決」

平成13年(ワ)第610号 建築続行禁止請求事件

判決

主文
1.原告らの各請求をいずれも棄却する。
2..訴訟費用は原告らの負担とする。

事案の概要

1.本件は、原告宇子の所有する土地上の建物に居住する原告らが、各土地の宅地造成工事を計画、施行する被告らに対し、本件造成工事を施行すれば、大雨時に本件工事区域及び本件土地が崩壊するなどして原告らの生命、身体、財産が侵害される恐れがあるとして、不法行為に対する差し留め請求権に基づき、本件工事区域における土地の堀削、盛土、その他土地の形態を変更する工事の施行の禁止を求めているのに対し、被告らは、本件造成工事計画は安全性の高いものであり、また、実際の施行も原告らの意見を取り入れて安全に行っているから、本件造成工事の完成により従前よりもかえって本件工事区域ひいては本件土地の安全性を高めることが出来ると主張している事案である。


  結論

 以上検討したとおり、本件造成工事により、従前よりも、本件工事区域の斜面が緩やかになること、本件工事区域では原告らが主張するようにおし沼砂れき層に大量の地下水が蓄えられ、これが限界に達したときに、一気に地下水が流出して、本件工事区域ないし本件斜面が崩壊するとまでは証拠上認められないこと、被告らが行った斜面安定計算は常時においても、豪雨と大地震を同時に想定した場合でも、共に川崎市の基準を満たしていること、安定計算の基礎となる物性値の取り方も各種土質検査、観測結果に基づく一定の合理性を有するものであること、設計施行計画、特に排水計画は、原告らの湧水量などに関する主張を酌んで、この規模の造成工事としては、十分な対策をとられている事などを総合考慮すると、本件造成工事の計画が不十分なため、その施工を進めることが危険であり、直ちにその施工を中止しなければならないような状況にあるとまで認めることはできないというべきである。
 また、本件造成工事により、本件土地にコンクリート吹付工された地盤にクラックが発生し、これが原因で本件土地が崩壊する恐れがあると認めることもできない。
 よって、本件各請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文の通り判決する。

横浜地方裁判所 川崎支部民事部

裁判長裁判官      打 越 康 雄
裁判官     八 木 貴 美 子
裁判官       山 口 勝 久