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要望書
平成16年7月29日
要望書               
内閣総理大臣 小 泉 純一郎 殿
内閣府特命大臣(科学技術政策)茂 木 敏 充 殿
厚生労働大臣 坂 口  力  殿
文部科学大臣 河 村 建 夫 殿

着床前診断を推進する会    
患者夫婦 22組            
医 師  大 谷 徹 郎
医 師  根 津 八 紘
弁護士  遠 藤 直 哉

 着床前診断を推進する会は、平成16年7月10日結成され、同日別紙声明文のとおり、着床前診断の実施を社会的に容認されるよう公表いたしました。また、着床前診断を推進するための署名運動は、署名者約2500名になり(本日1250名分提出)、大きな世論となりつつあります。他方、社団法人日本産科婦人科学会(以下日産婦会)は、平成16年7月23日政府に対し、着床前診断に関する要望書を提出いたしました。しかるに、当会といたしましては、日産婦会の要望書が、大学病院の今までの既得権益を何とか守って欲しいという依頼書であり、それは世論を反映したものではなく、また、規制緩和の政策に沿うものではないことを上申します。当会を始め、日本は欧米の先んだ医療と提携できる状況にあり、安全・確実な医療を提供できるので、国の役割は患者の選択権と自己決定権を保障することであり、既得権益を持つ者と結託して患者の権利を侵害することはすべきでないことは明らかです。多くの患者が先進医療を安心して早く享受できるよう、以下の通り意見及び要望を提出いたしますので、充分ご配慮下さい。なお、当会の患者5名、大谷医師、根津医師は、日産婦会に対して着床前診断を実施することの妨害禁止請求を東京地裁に提訴している状況の中で、日産婦会の要望書は政府に対して、治療妨害をするよう上申したものであり、不当な行為でありますが、仮に、国が治療を制限することも、患者の権利を侵害する憲法違反となることを付言申し上げます。

(1) 着床前診断は、世界的には、1000例を遙かにこえる段階に達しており、臨床実施が進んでおり、日産婦会のいう臨床研究の段階ではなくなっております。7月10日当会総会で着床前診断の世界的権威であるムネ博士が明言していたことにより明らかです。
(2) 全国の多くの患者の救済のためには、体外受精のための採卵を、昼夜・休日実施できる病医院で、臨床実施をする必要があり、一部の大学付属病院に限定することは妥当ではありません。
(3) 医療における適正な規制緩和は、国の政策として進展しており、国民の自由な選択の下に医療を進めることが国の政策に合致しています。
(4) 日産婦会が「商用主義反対、営利目的ではないこと、臨床研究として経費を研究施設が負担する」を理由として、一部の研究施設に限定しようとしていることは、患者の治療を受ける権利を制限し、独占禁止法の趣旨に反することとなります。
(5) 日産婦会の会告及び運用では、着床前診断を許容すべき重篤な遺伝性疾患を、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに限定しておりますが、これ以外の重篤な疾患は多々あり、また習慣性流産の染色体異常も重篤なものです。それ故、医師のインフォームドコンセントの下、患者の自己決定権に基づく治療を推進すべきです。多くの患者がこの治療を強く待ち望んでおります。
(6) 現在の遺伝カウンセリングにおいては、日産婦会の全面禁止に近い会告が存在するため、着床前診断についての充分な説明がなされておりません。日産婦会の会告を廃止し、遺伝カウンセリングが臨床現場で適切になされるよう改善されることを要望いたします。
(7) 日産婦会は、着床前診断を「生命の選別を行う手技」としておりますが、受精卵の選別を「生命の選別」と規定するならば胎児の中絶は「生命の抹殺」となってしまいます。極めて不用意な言葉の使い方と言わざるを得ません。発生学の教科書及び日産婦会用語集を参考にすれば@受精卵(着床前、preembryo、「生命の源」)A胚子又は胎芽(着床後、embryo、「生命の萌芽の発生」)B胎児(8〜9週以後、fetus、「生命の萌芽の成長」)Cヒト(出生後,「生命の誕生」)の段階に分けることができます。このような学問的分類によれば、受精卵診断は「生命の選別」に当たらず、中絶は「生命自体の抹殺」にならないが、AからCに向けて制限すべきとの科学的検討が可能となります。日産婦会の会告、総合科学技術会議の報告書でも、受精卵の研究・廃棄は、受精後2週間まで認められております。「受精後から生命の始まりとし、受精卵の操作及び中絶に全て反対すると共に、体外受精そのものにも反対する考え方」は、カトリックに見られるものであり、日本の社会になじまないものです。国の政策や立法において、一部の宗教上の考え方を採用することは、当然に、憲法違反となります(注:上記Aについて米国生殖医学会では、preembryoを原始線条が出来る2週間までとしているので、「embryoの発生−生命の萌芽の発生」はさらに遅くなり、着床から2週間後に始めて発生することとなる。preembryoの用語は、米国生殖医学会が採用したもので、日本の医学書、医学辞典では未だ登場していない)。
(8) 日産婦会の監督官庁である文部科学省におかれては、上記の意見を踏まえて、日産婦会に対して適切な監督、指導を要望いたします。

以 上




着床前診断実施についての 声明文
平成16年7月10日
着床前診断実施についての声明文
 
着床前診断を推進する会(PGD会)
患者夫婦 21組
医 師  根津八紘
医 師  大谷徹郎
弁護士 遠藤直哉

 当会は、本日、着床前診断(受精卵診断)を希望する患者夫婦21組を中心として結成されました。当会は、政府、政党、日本産科婦人科学会、医療機関、報道機関などに対して、着床前診断の実施を社会的に容認されるよう強く呼びかけます。着床前診断は、1990年以来、世界で1000例を越し、ナチス関係国を除く、全世界で実施されており、日本は何と15年以上も遅れてしまっております。当会は、着床前診断が、法令で何ら禁止されておらず、患者が治療を受ける憲法上の権利を有するため、患者救済のため以下のとおり、本年秋頃より実施を予定します。

1.当会の患者の17組は、習慣性流産であり、3〜7回と流産をされていることにより、早急に実施を要請されており、医師としては治療の義務を負うもので、これ以上放置することは出来ません。着床する受精卵のみを選択することであり、生命の選択に当たるとの非難には全く当たりません。

2.当会の患者4組は、遺伝性疾患回避のために、実施を求めております。鹿児島大学の申請のときから最近の日本産科婦人科学会のシンポジウムまで、既に議論は尽くされており、重篤な疾患については、多様な選択肢の一つとして認めるべきであるとの結論に至りつ??????????????Iつあります。当会では、さらに重篤とは患者の自己決定権に基づき、医師との協議のうえ柔軟に解釈すべきものと考え、 諸外国で実施されている様々な遺伝性疾患の症例に至るまで実施を予定します。

3.着床前診断の技術は、欧米、特に米国では著しい進歩を遂げているため、当会は、米国のムネ博士と提携しつつ、患者への充分なインフォームドコンセントを行い、最高水準の技術を提供し、安全かつ確実な医療の実施を予定します。

4.当会の患者5組らは既に、日本産婦人科学会に対して着床前診断の実施について妨害禁止請求の訴訟を提起しておりますので、関係機関におきましても、当会の訴訟上の請求を充分尊重されるよう要望致します。

以 上